製品の小型化・高機能化が進む現代において、消費者の目はますます厳しくなっています。ほんのわずかな傷や異物が、製品の価値を大きく損ない、企業の信頼を揺るがす時代になりました。この課題を解決する鍵が、新たな精密検査で行う表面欠陥検査です。
品質向上のため、従来の表面欠陥検査での限界から、AIや3D技術を駆使したより精密な検査へと時代は変わっています。自社に最適な装置を選ぶためのポイントも踏まえて解説します。
かつて、製品検査の主役は「熟練検査員の目」でした。ですが、この方法には以下のような限界がありました。
これらの課題を克服するために、画像処理技術を用いた「自動精密検査」が開発され、今やAIの活用によって革命的な進化を遂げています。
現在の精密検査は、製品に触れずに(非接触)、製品を壊さずに(非破壊)行うのが主流です。その中心となるのが「画像処理検査」です。画像処理検査は、照明(光)で欠陥を照らし出し、カメラで捉え、画像処理装置で良否を判断する仕組みです。特に重要なのが照明技術です。欠陥の種類に応じて照明を使い分けることで、通常は見えない欠陥を「見える化」します。
精密検査で注目されている技術がAI(人工知能)、特にディープラーニング(深層学習)の活用です。
従来の画像処理検査は「ルールベース」と呼ばれます。「傷とは、長さが〇mm以上で、幅が〇mm以上、色が黒いもの」といったように、人間がすべての欠陥のルールを一つひとつプログラミングする必要がありました。または、正常な製品の画像と照らし合わせ、一致度を測るなどの方法です。しかし、光の加減や設定の複雑さもあり、全ての欠陥パターンを網羅できるわけではありません。
一方、AI検査は、人間がルールを教えるのではなく、AIが自ら学習します。
大量の「良品画像」と「不良品画像(様々な種類の欠陥)」をAIに見せ、「これが傷」「これが汚れ」と正解を教え込むパターンです。AIは画像の特徴を自ら学び取り、人間のように「これは、たぶん傷だろう」と判断できるようになります。欠陥の種類がある程度特定できる場合に非常に高い精度を発揮します。
こちらは「良品の画像」だけをAIに学習させます。「正常な状態」を完璧に覚えさせ、それと少しでも違うもの(=いつもと違うもの)をすべて「異常」として検出します。不良品のデータがほとんどない場合や、予期せぬ未知の欠陥を見つけたい場合に非常に有効です。
AI検査は、従来のルールベースでは不可能だったレベルの精密検査を実現します。人間の感覚に近い判断が行なえ、木目や繊維のような複雑な模様の中から、本当の欠陥だけを見分けることも可能です。また、微妙な色ムラや、背景に紛れたわずかな傷などもわかります。
精密な表面欠陥検査は、不良品を防ぐための単なる「コスト」ではありません。それは、製品の付加価値を高め、顧客の信頼を獲得し、生産性を向上させ、ひいては企業の未来の競争力を創り出す方法です。自社の品質向上のため、表面欠陥検査をよりよくする方法として、今後も重要度が高いと心得ておきましょう。